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曾屋神社(秦野市)神幸祭の神輿巡行を見てきた

小田急小田原線本厚木駅以西のよく分からなさを象徴するような地域、秦野。秦野があるのは秦野盆地と呼ばれる周囲から隔絶された土地なので、神奈川県の中でも一二を争う程の独特な文化が発生していたり、生き延びていたりする。

曾屋神社神幸祭の神輿が独特

たとえば神輿。去る7月18日(土)と7月19日(日)には、神奈川県内の色々な神社で夏の例大祭神輿が出る神輿の当たり日で、このサイトで昨年”行ってきた”記事を上げた平塚三嶋神社の須賀のまつりや、大磯の高来神社御船祭が行われていた。ついでに翌日7月20日(月)が海の日で、深夜から朝方にかけて茅ヶ崎の浜降祭があったものだから、神輿好きは眠る時間も惜しかったことだろう。これらの神輿巡行に共通するのは、「どっこいそーれ」の掛け声で神輿の脇につけられた箪笥と言う金具を叩きながら担ぐ、どっこい神輿が主役であることだ。

参考画像:須賀のまつりの神輿 横に箪笥金具が

参考画像:須賀のまつりの神輿 横に箪笥金具が

で、秦野の神輿はどうであるかというと、どっこい神輿は少数派のようである。そしてとりわけ独特に見えるのが、当たり日の18日・19日に行われていた、曾屋神社の神幸祭で出る神輿。こちらの神輿は箪笥金具こそ付いているものの、叩き付けてリズムをとるという用途には使われていない。むしろ別の用途のために大いに活用されているのだ。

それでは”行ってきた”レポートを初日の18日分から始めてみよう。

神幸祭1日目 〜大雨で紙垂も溶けて落下するほど

1日目は、天気予報で報じられていた通りの大雨。なんとか雨の間隙を縫って神輿をつかまえてこよう、と出かけたのだが、すぐに傘を差しても防ぎきれないような雨に襲われてしまった。
何しろ、普段水が流れていないことで有名な秦野駅前の水無川も、このとおりである。

水無川が濁流に

水無川が濁流に

それでも秦野市街を歩いていると、そこら中から太鼓の音色が聞こえてきた。街中を各町内の叩き手を乗せた車が回っていたからである。

休憩中の町内神輿と太鼓隊

休憩中の町内神輿と太鼓隊

神輿を担ぎ手が担いでいる場合、太鼓の音に加えて掛け声とホイッスルの音があるので分かる。特にホイッスルの音は神輿の姿が見えなくても方向を判別するのに役立つため重宝する。もっとも、この日町内神輿が担がれている場面にはついぞ出くわさなかったが…

曾屋神社神輿巡行フィナーレの舞台

気を取り直して、翌日に神幸祭のフィナーレを飾る宮入ルートを予習しておく。宮入は19日の20:00に行われるのだが、2基の神輿が神社へ向かう大通りを休みつつ巡行し、途中で宮入のためにフォームチェンジを行ったりする。

大通り途中の詰所

大通り途中の詰所

写真に写っているように、神輿が巡行する通りの脇には縄が張られ、紙垂が吊るしてある。18日は雨が強くなってきて、この紙垂がほとんど溶けて地面に落ちてしまっていたのが印象的だった。

曾屋神社周辺の前日風景をいくつか。

曾屋神社は県道705号と国道246号の交点付近にある

曾屋神社は県道705号と国道246号の交点付近にある

翌日の宮入でくぐられる鳥居

翌日の宮入でくぐられる鳥居

鳥居の傍らに屋台が10店ほど

鳥居の傍らに屋台が10店ほど

屋台は鳥居の正面でなく、向かって右側に10店程出店しているだけである。鳥居正面にも道がのびているのだが、その道は宮入で神輿が寄り道するところであるので出店できない。境内もあまり大きくないものだから、店を開く場所があまりないというか。

神輿は車に乗せられてポイント巡行

大雨に打たれつつ、曾屋神社が公式サイトで配っていたPDFマップを参照しつつ神輿を探す。神輿の移動は宮入の時こそ人の肩に担がれてであるが、氏子を回る際には車に乗せられていくのが主流だ。車から神輿が下ろされると、続いて神職がぞろぞろとマイクロバスから降りてくる。

神職ご一行のバス

神職ご一行のバス

ポイントに配達された神輿

ポイントに配達された神輿

町会会館などのポイントで神輿が担がれるないし祝詞を唱えられて、再び次のポイントまで車に乗り込むといった移動である。
神輿がワッショイ(ただし掛け声はワッショイでなく「イヤー!」だか「ソヤー!」のように聞こえる)担がれている場面にも出くわした。

こちらで担がれているのは乳牛神輿

こちらで担がれているのは乳牛神輿

荒々しく担いだ後トラックの後ろ荷台にそっと乗せる姿に現代的な風景を見た。まあ本番は2日目です。

神幸祭2日目 〜曇り空でも担ぎ易い気温

2日目の19日。天気予報どおり雨、かと思いきや、案外もってくれた。むしろ雨を嫌がって中々出発できなかったため、昼の部や秦野駅前のまほろば大橋での3社連合神輿お披露目を見逃す羽目に。

神幸祭フィナーレ 宮入に向けて2基が巡行

ということでいきなりフィナーレ。宮入に向けて大通りを曾屋神社の神輿と、乳牛神輿の2基が進む。乳牛神輿と先程から登場しているが、乳牛(にゅうぎゅう)をかたどったハリボテ神輿ではなく、乳牛(ちゅうし)地区の神輿である。乳牛の2社は明治時代に曾屋神社に合祀されたという経緯であるらしい。

神輿の人だかりの最後尾

神輿の人だかりの最後尾

神輿2基(一番組・二番組)が見えてきた

神輿2基(一番組・二番組)が見えてきた

昨日の姿と異なり、神輿には沢山の提灯がつけられている。そう、万灯神輿だ。この提灯は取り付け・取り外しができるようになっており、日没後暗くなってくる19:00くらいに取り付けがされる。
こちらが二番組神輿(乳牛神輿)。

乳牛神輿の提灯は二段

乳牛神輿の提灯は二段

取り付けられた提灯は二段である。一方、一番組神輿はこれが三段になる。

提灯が三段 一番組神輿

提灯が三段 一番組神輿

最早提灯の暴力である(言ってみたかっただけ)。これが本当に幻想的な姿なのですよ。

曾屋神社神輿ココが独特!

さて、曾屋神社の神輿には箪笥金具がついているのだが、叩いて鳴らすために使われず、白いたすきを引っ掛ける把っ手として使われている。

箪笥金具をたすきの留め具として利用

箪笥金具をたすきの留め具として利用

そして、たすきにはもう一点不思議な点がある。四方の把っ手から上に伸びるたすきの交点(神輿のカド部分)に、太鼓のバチのような棒が2本結びつけられ、固定されている。

たすき交点のバチのようなもの

たすき交点のバチのようなもの

このバチはいつ活躍するのだろうか?ずっと疑問に思っていたのだが、曾屋神社の手前で宮入のためのフォームチェンジを行う際に、このバチの役目が判明した。

宮入するためのフォームチェンジ

この曾屋神社の神輿は、どっこい神輿でよく見られたような担ぎ棒が二本(二天棒)の神輿でなく、井桁状になっている。担ぎ方はせり担ぎで、担ぎ手が神輿に背を向けて担ぐ。
井桁の横棒はそこそこ長いものがつけられているのだが、フィナーレの宮入の際、曾屋神社の鳥居を通るために短い横棒へと取り替えられる。

分かりにくいけれど、横棒の取り替えを行っている

分かりにくいけれど、横棒の取り替えを行っている

横棒取り替えのタイミングで、提灯にも火を入れ直していた。写真のとおり屋根につけられた提灯は上に人が登って取り替えるのだが、この際に足をかける足場として例の2本のバチが使われていた!なるほど。
独特なバチスタイルは、提灯の付け外しをスムーズに行うための機能的な装備だったのだ。箪笥金具もしっかりと役立っているが、これが箪笥金具の本来の用途であり、次第にたすきがけと共にどっこい神輿から失われていったのか、あるいは秦野で金具が独自のポジションを得たのか。謎はまたまた深まるのであった。

横棒の交換が終わると、担ぎ手代表の挨拶がある。先人に恥じないように宮入を成功させてみますという宣言に、周囲から拍手がわき起こった。

いざ宮入、という場面

いざ宮入、という場面

曾屋神社への宮入 神輿2基が階段をのぼる

宮入では鳥居をくぐってすぐの急な階段をのぼり、拝殿の正面まで神輿を入れる。障害となるのは足下の階段と、ギリギリの高さの鳥居。階段途中に踊り場があり、その手前にも鳥居がある。

神輿がよろめきながらのぼってくる

神輿がよろめきながらのぼってくる

神輿が傾いたり、鳥居に頭をぶつけそうになるたびにわっと声が起こる。そして担ぎ手の間に飛び交う怒号。

神輿の頭が鳥居にぶつかりそうに

神輿の頭が鳥居にぶつかりそうに

なんとか2基とも通り抜けました

なんとか2基とも通り抜けました

拝殿前に着いた神輿を観客が取り囲み、フィナーレ。神輿が着くまで漆黒の空間だった拝殿前が、周囲の提灯に一斉に灯が点くとともに祝祭感溢れるのが幻想的であった。

ようやっと到着

ようやっと到着

おかえりなさい

おかえりなさい

曾屋神社は水神であるというし、宮入で天気がもったのは、やはり取り計らいであったのかもしれない。

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