店の売り文句として、”日本一まずい”ことを掲げるラーメン店。こういう売り文句を見ると、安易に日本一を出してくるあたり、きっと味的には全国のラーメンハンターの歯牙にもかからない普通のラーメンなんだろうなとヒネくれてしまう。
さて、そんな唐突な看板disから始まったわけだが、国道246号を走っていると、赤い看板に黄色と黒の文字で書かれた、この売り文句が気になる。とても気になる。しかも、ディナータイムに前を通りかかると結構繁盛しているのが見て取れるわけだ。国道246号を通っていてこの店が気にならない人はいないはずなので、話のタネには十分すぎる程なる。捨て銭上等くらいの気持ちで、敷居をまたいでみた。
そもそもオロチョンラーメンって何?
他のラーメン店のメニューとして、見かけないこともないオロチョンラーメン。どういったラーメンのことをいうのかというと、まずスープは味噌味。北海道流の味噌味そして唐辛子を大量に入れて、辛く味付けしたもののことをいうらしい。一説に”オロチョン”という言葉がアイヌ語で”勇敢”という意味であるとか、アイヌの火祭りオロチョン祭からきているとか。注文する客が”勇敢”な者ということになるよう、食べにくいくらいの辛さに仕立て上げる、それがオロチョンラーメンのようだ。
オロチョンラーメンを店名に使っているのは、この”利しり”だけではない。それでは”オロチョンラーメン利しり”が全国的にどれくらいの規模のチェーンなのかというと、平塚に本店が存在し、ここ伊勢原に支店がある2店体制のようだ。新宿歌舞伎町にも”オロチョンラーメン利しり”があるのだが、そちらには前身の店があって、どうもチェーンとしては違うようである。類似の店との見分け方は、商標登録もしているという”日本一まずい”だ。他のオロチョンラーメンがいくらまずくても、この日本一まずいチェーンにはかなわないというわけである。
オロチョンラーメン 真っ当にうまいわけである
オロチョンラーメンの辛さは、辛い順に1辛〜7辛まで段階を選べるようになっている。一番辛い1辛の上に君臨するのが、特1、そして最上級の特2。今回は初めての訪問ということで、スープの味が判別できなくならないよう特1で注文した。
ちなみにスープの味も味噌・塩・醤油の中から選べるようになっているようである。最早オロチョンラーメンの定義があやふやになっている気がする。勿論スタンダードな味噌を頼みました。
結構大きめな器に、担々麺のような色をしたスープ。激辛ラーメンと聞いて思い浮かべるようなレッドなスープではないようだ。具は中華屋の味噌ラーメンらしいもやし肉炒め。きくらげが入っているのが嬉しい。
スープを一口飲んだ感想は、「なんだこれ、全然いける」。いけるというのは味のことでもあり、辛さのことでもあり。日本一まずいものにしようとする努力の痕跡は見られない(これは予想通りだけど)。近所にあれば通いたくなる程真っ当な味噌ラーメンである。辛さも料理というカテゴリを逸脱してしまうような激辛ではなく、スープを飲んだ後に口の中がヒリヒリという代物であった。特1でこれということは、それより下の辛さを頼んだ客も、「これならいける、次回はもう一つ辛いものにしよう」と、再訪する動機を与えられてしまうだろう。きっと店側の戦略なのだ。
具についても、食感が楽しくて高評価。ネギもいい。麺は取り立てて書くことがないけれど、スープに対して主張しすぎない。日本一まずいラーメンは、まあ伊勢原市西部で一番くらいにはうまいんじゃないかな(東部を入れると、ドレファラシドがあるので)。
その勇敢は無謀ではなかったか
特1以上を頼む人間はあまり多くないのか、麺が来る前に黄色い短冊とマッキーを渡されて、オロチョン登頂記念にひと言が残せるシステムになっていた。”楽勝”と書いて提出、会計の際にも「辛さ大丈夫でしたか?」的なことを聞かれたので、気丈に返答をしたと思う。
次の日、トイレでひどい目にあったのは、また別の話である。
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