小田急小田原線を小田原方面に本厚木から3駅行くと、鶴巻温泉という駅がある。鶴巻温泉という名前が示すように、温泉が湧いて温泉旅館も数件あるのだが、行楽地となるほどの温泉情緒は皆無、駅名に温泉がついていなければ通常の小田原線の駅との変わりは特にない。
ただ、大山に登山する場合には、登山口の一方の最寄り駅ということで、この駅を降車駅あるいは帰りの乗車駅として利用する登山者が多い。ということで、日帰り温泉施設や、行楽シーズンの金払いの良い客を見込んだ食事処などが、ほんの僅かだが存在する。
今回紹介する「信玄」は、そんな金払いの良い行楽客にグレードの高い蕎麦膳を提供しつつ、地元人気もしっかり掴んでいる蕎麦屋である。また、蕎麦通のネットワークは自治体を越えて存在するため、わざわざこの店の蕎麦を楽しむために鶴巻温泉駅で降りる客もある(私もそうだ)。
とは言え、この信玄までは駅から結構歩く。鶴巻温泉駅と東海大学前駅の中間ほどに存在するのだが、どちらの駅からも緩やかな上り坂で10分ほど。車で来店の場合には、隣り合ったセブンイレブンにだだっ広い駐車スペースがあるので、置き場所には困らない。ただし、運転手は酒類がいただけないので、なかなかに悩ましい。
メニューには地のものは少ない。そばの他に地鶏料理なども推されているが、残念ながら大山(だいせん)地鶏を使っており、大山(おおやま)登山帰りとしては紛らわしく、ぬか喜びである。そば粉についても、秦野市は蕎麦産地という話だが、この店では北海道産など別産地のものをあえて使っている。地場産の蕎麦を食べたければ、もう少し足を伸ばして石庄庵まで出るべきか。
頼んだそば膳は、天丼にお新香にアイスクリームがついてきた。天丼はまあ、不可のないまあまあのもの。そばは細めで野趣味がない、ちょっと高級な店で食べられるタイプである。このタイプの蕎麦は、口の中に啜り込んだ時の、少し泡立つような感触を楽しむものだと思うが、その点については辛汁が邪魔をせず、思いのままに泡が立つ好感触である。辛汁にやや酸味あって、特徴と言えば特徴かもしれない。そば湯にはきめ細かい粉の沈殿があり、なかなかに趣深い。
ただのせいろだけであれば、650円から楽しめる。この手の蕎麦屋の中では抜群にお得な価格で、満足感が得られることは間違いない。次に行ったときは、お膳形式にしたとき、値段以上の満足感が得られるメニューを探してみようと思う。
コメント
[…] 手打ち蕎麦信玄の紹介で言及した鶴巻温泉駅。蕎麦を食べにいくついでにか、あるいは大山登山のついでにかで、駅名にその存在が示唆される、鶴巻温泉とやらに浸かりたくなってしまったとしよう。 […]
[…] 手打ち蕎麦信玄で蕎麦をすするため、鶴巻温泉駅で降り、折角なのでと鶴巻温泉を堪能するために弘法の里湯に浸かる。すると施設内に何やら、蕎麦屋があることに気付いた。 こう見えて蕎麦好きな私は、躊躇いなくそのお店、そば処鶴寿庵の暖簾をくぐった。まあ実際、この蕎麦屋が評判だということは以前から耳にしていたのだけれどね。 […]