平塚名物グルメ 弦斎カレーパン

弦斎カレーパン グルメ
弦斎カレーパン

平塚に関わりのある偉人村井弦斎について、平成になってから平塚市がプッシュを始めたということを紹介した。そして村井弦斎と言えば『食道楽』なので、小説中に出てくる豊富なレシピをもとに当時の料理を再現し、街のグルメとして推し始めている。というわけで、今回紹介するのはそうした再現グルメの一つ、高久製パンの弦斎カレーパンだ。

弦斎カレーパンとは

弦斎カレーパンというが、実は『食道楽』の中にカレーパンのレシピがあるわけではない。それどころか、カレーパンが誕生したのは村井弦斎の没後である。それでも弦斎の名前が絡んでいるのは、パンの中身のカレーが『食道楽』に出てくるレシピに倣っているからだ。
『食道楽』のカレーレシピは秋の巻に出てくるもので、ストーリー中に印度風カレー、巻末レシピに牛肉のライスカレー、鶏肉のライスカレー、魚(海老・蟹を含む)のライスカレー、アサリ(牡蠣・蛤・貝柱でもよし)のライスカレー、玉子のライスカレーが登場している。また、レシピは書いていないものの南京豆入りのライスカレーについても言及されている。平塚市内の他の店舗でも、これらの弦斎カレーの再現を試みているところは結構あるようだ。
高久製パンの場合パン屋ということを活かして、より手軽に弦斎カレーが楽しめるようなカレーパンにしたのだろう。あとは、カレーライスらしくパンの生地に米を盛り込み、またカレーとセットで提供される福神漬けをなんとカレーの中に入れるという形でインパクトを出した。村井弦斎について知らない人でも、福神漬け入りのキワモノカレーパンとして興味を持ってくれるだろう。

弦斎カレーパン

弦斎カレーパン

村井弦斎と福神漬け

ただ、このグルメに接したときに、人によっては村井弦斎がカレーに福神漬けを突っ込んだ人物なのだとして捉えてしまうのではという心配もある。あるいは、村井弦斎がカレーと福神漬けを組み合わせた最初の人物として認識されてしまうかもしれない。
実際のところ、村井弦斎と福神漬けの関わりは、調べた限りどうも無さそうなのである。カレーに福神漬けを初めて添えたのは、日本郵船の欧州航路客船が最初であるとのこと。ましてやカレーに突っ込んで提供した例はどこにも出てこない。
この話は、”チャツネー”というインド周辺で使われるペースト状の調味料の存在を一旦挟んで理解しないといけないようだ。主に果物から作られるチャツネーは、カレーの中に入れる隠し味やカレーの添えものとして使われる。これは西洋世界にも導入されており、弦斎が渡米中に実際チャツネーを添えたカレーと接している可能性も高いだろう。
『食道楽』の中でも、印度風カレーの紹介でチャツネーの利用について言及がされている。もちろん、ペーストとしてルーの中に入れる利用方法、添え物としての利用方法のどちらについてもだ。
そして件の日本郵船の話だが、カレーに添える添え物としてこのチャツネーの代わりに福神漬けを採用したのではないかと言われている。実際カレーに添えられる以前の福神漬けには色がついておらず、一方採用以降の福神漬けにはフルーツのチャツネーのような赤い色が付けられている。
この福神漬けの採用が1902年か1903年と言われていて、1903年から連載が始まった『食道楽』のカレーとチャツネーのくだりを参考にした可能性もあるという話ではないだろうか。

弦斎カレーパンが購入できるところ

弦斎カレーパンは高久製パンの直営店および平塚市内の取扱店で買うことが出来る。比較的良く見る印象だが、確実に手に入れたいなら、直営店のシャンパンベーカリーに行くと良いだろう。

高久製パンシャンパンベーカリー

高久製パンシャンパンベーカリー

見た目もオシャレなシャンパンベーカリーは国道62号線沿いにある。

神奈川県平塚市桜ケ丘4-46

弦斎カレーパン以外のパンもお得に購入する事が出来、来店客にはコーヒーのサービスがあるというところもありがたい。

余談:実は食道楽のカレーパンはもう一つある

高久製パンの弦斎カレーパンの他にも、食道楽のカレーパンをうたっている商品がある。愛知県犬山市の明治村の屋台で出しているカレーパン『食道楽のカレーパン』というものがそれで、こちらは再現カレーの中に福神漬けでなく南京豆(ピーナッツ)を入れている。
明治村はこの他にもコロッケなど食道楽の再現グルメを提供しており、提供し始めた時期をみると、どうも弦斎カレーパンと同じくらいの時期であったようだ。
同じ愛知県とはいえ、豊橋市と犬山市は離れているので出身地つながりという事ではないだろうが、この先B級グルメフェアみたいなものでかち合わないかちょっと心配である。

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