小田急小田原線の秦野駅で降りると、繁華街は主に北側に広がっている。昼時に食事処を探す場合には、どうしてもそちらに足を向けがちなのだが、今回は反対側の南口を出て、東南方向に歩く。すると川を渡る手前に、ZIPANGというロボットアニメの題字のような文字が掲げられた店が見つかる。このお店が、最近秦野駅周辺では最もラーメン特集に掲載されているであろう有名店だ。
ZIPANGはラーメン屋ながら、夜はカクテルバーとして営業している。なお、バー営業の場合でもラーメンは出すらしい。こういった営業形態は珍しいようでいて、何店か実際に耳にしたことがある。酔った勢いで、シメのラーメンまで注文してくれることを期待してのことなのであろうか。とにかく店内はカクテルバーの装いといった形で、店員もラーメン職人の堅苦しい雰囲気よりは、バーのあんちゃんといったような雰囲気である。
この店では、海老吟醸、海老ポタつけ麺といった海老を使ったスープのメニューが有名だ。どの場合でも、ベースは鶏と豚骨のスープとなっており、あっさり系のラーメンよりは、こってり濃厚なラーメンが食べたい時に選択肢に入る店だろう。今回ももちろん海老ポタか海老吟醸を期待して入店したわけだが、生憎夏の暑い時期には素材の劣化の関係上、昼には出せないという。確か9月15日くらいまでだったか。海老のラーメンを食べたいのならば、カクテルグラスを傾けている横で啜る勇気が必要になる。
そこで、残念に思いながらも海老系でないメニューの、魚介焦しネギ醤油680円を頼んだ。一応この店のスタンダードメニューになるだろうか。
丼の上を占拠しているのは、水菜だろう。実際に食べてみると、からし菜のような辛さのアクセントもあった。そして焦しネギ。麺は家系のような太麺だが、よりプリプリ感が強い。
スープは醤油味だが、最初に飲んだ時に何とも言えない丸みを感じた。正直、厚木以西で醤油ラーメンを頼むと塩辛いものが出てくるだろうという予想もあったのだが、この醤油スープは醤油の風味がありながら、仄かな甘みを帯びている。これが実に素晴らしい。今までに無い醤油ラーメンを食べたという満足感がある。先述の麺や水菜とも、抜群に相性が良い。食べ進めるのが楽しくて仕方が無い。
スープの底には、飴色のタマネギが沈んでいた。このタマネギの甘さと、魚介系ながら煮干し等のエグみ、苦みを存在主張させないところが、独特の味を作り出しているのだろう。
お目当てメニューではなかったため、あまり期待せずにいただいたが、期待を裏切る出会いがあって良かった。
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