厚木以西の(相模川以西の)海沿い地域の中心というと、何を置いてもやはり平塚だ。他の地域と比べて人口が多いし、湘南地方の管轄行政機関もある。
ただ、平塚というとそこに住んでいる人の目がどうも相模川の東側を向いているような感じもある。相模川より西地域の覇者たろうとするよりは、ライバルは東側の茅ヶ崎市、藤沢市といったところで、相模川東岸の高座郡寒川町と組んでツインシティ構想を掲げ、東岸に橋頭堡を作っていたりしている。
ということで、相模川以西の自治体にとって平塚はあまり信頼できる覇者ではない。もちろん平塚七夕まつりなどがあれば遊びに行ったりはするけれど、七夕まつりは相模川以西地域の代表的なお祭りというわけではないだろう。
一方、平塚以外で代表格を探そうとすると、歴史的に華やかな時代があった大磯町が挙げられる。大磯町は明治時代から別荘地として有名であったり、湘南発祥の碑がある鴫立庵があったり、日本初の海水浴場である大磯ロングビーチがあったり、おしゃれな店が街中にあったりする一方で、あくまでのどかな雰囲気が、相模川以西地域を代表していると言えなくもない。おしゃれで面白い店なんて、駅前商店街に長屋のようにまとまって並んでいなくても、ふと裏道に入ったときに見つかればそれでいいのだ。
ということで、大磯町で毎月第三日曜日に行われる月例マーケットイベントには、湘南・西湘地域から中小商店主が参加し、さながら相模川以西地域の見本市のようになる。そのイベントとは、『大磯市』のことだ。
大磯市の基本情報
大磯市が開催されるのは、先程書いた通り毎月第三日曜日。漁港の採れたて海産物が楽しめる祭りでもあるため、開催時間は朝9:00〜14:00と早めになっている。ただし、夏には夜市バージョンで17:00〜20:30になる。
マーケットが立つのは大磯港。大磯港はJR大磯駅から行こうとするとそれなりに距離がある上、大磯市の際にも特段順路案内のようなものが出されていないので、そこは注意する必要ありだ。大磯市では、メイン会場に加えて街中の店舗も合わせた企画を行っていたりする。
ただの漁港朝市と何が違うのかというと、個性的な出店主が多く、海産物、練り物、酒、コーヒー、エスニック料理、ラーメン、パン、スイーツなど盛りだくさんのラインアップ。しかも、それぞれの頭に”こだわり”をつけて良いくらい、趣味性や追求性の高い品が多いのだ。まさか漁港の祭りでスペシャルティコーヒーとイタリアのオーガニックワインとヨーロッパ古来製法のパンと本格タンドールで焼いたチキン・ナンとetcetc…に会えるとは思わないだろう。
また、食べ物以外にも、クラフトマーケットの区画があり湘南・西湘からやってきた商店主・個人が小物などを販売している。パフォーマーが人を集めてパフォーマンスを行っている。でもごった返すわけでもない、賑やかながらまったりなお祭りだ。
2月の大磯市。気になった出展物
折角なので、2月に行われた大磯市で気になった出展物を写真付きで紹介する。あくまで出店者・出展物は毎回変動するので、毎回以下のものが出展されているわけではないということに留意して欲しい。何に会えるかはそのとき次第だ。
大磯こたつみかんエール
大磯市を取材しようと思ったのは、大磯町と湘南ビールの熊澤酒造がコラボレーションした地ビール「大磯こたつみかんエール」の生が出ると聞いていたからだ。この大磯こたつみかんエールは、売り出されると同時になくなってしまうという人気商品。西湘をあそぶ会という日本酒を酒米から作っていたりするグループが出店者となって、大磯市でも提供されていたようだ。提供”されていた”となっているのは、会場に着いた頃に既に売り切れていたから。さらに、前日に降った雪の影響で樽も出なかったらしい。
3月にまた出展されるのを期待したいところ。雪で来場者が少なかったのにこの売り切れスピードだから、開場と同時ぐらいには確保しないといけない物なのかもしれない。
サンクトガーレのチョコレートエール樽生
代わりと言ってはなんだが、2月ということでサンクトガーレンのバレンタインビールが樽生で出ていたのでいただいた。出展者は中井町の宮川酒店さん。どうやら大磯市の常連らしい。ワイン・日本酒・ビールをセレクトして1グラス500円以下で提供していた。
幻のまぜそば モヒカンらーめん
モヒカンらーめんというと、久留米発祥の豚骨ラーメンチェーンが有名だけれども、それとは違った平塚発のモヒカンらーめん。あまり知られていないのは、実店舗が無いから。イベントに移動販売車で出店しているのが目撃される、幻のラーメンなのだ。
ラーメンとまぜそばはどちらも無化調。まぜそば一杯500円からと良心価格の割に、イベントでよく見られる小振りなプラ容器に盛ったタイプの”お試し版”的な量ではない。
幻すぎてあまり情報もないのだけれど、平塚市の桝屋刃物店という店舗の駐車場で、火曜日に出店しているお店ということでよいだろうか。常に5人以上の行列。大雪の後の開催でこれなので、通常はもっと並ぶ覚悟が必要な店なのかもしれない。
幻の魚 オシツケのあら汁
こちらは幻度は低くなるけれど、西湘以外の飲食店であまり出されているのを見ない魚、オシツケ。学名アブラボウズという深海魚で、とにかく身の殆どが脂質という深海魚。食べる時にオムツを履かないと、消化できない脂質が勝手に垂れてくるという要注意の魚だ。
このオシツケのあら汁が一杯300円で振る舞われていた。完全に予想外だったけれど、季節的には今頃の魚というから、出てもおかしくはないかもしれない。有り難くいただいた。
あら汁を食べているのに、羊肉泡鏌を食べている気分だ(伝わりにくい)。臭みもないし、スープに繊維状に浮かぶ肉質にもしっかりとした味があって美味い。これはやみつきになっても仕方が無い。
この他にも、挙げきれないくらいの面白い出展があった。大磯港はそれほど広くなく、平塚七夕まつりほどの人出も期待できるわけではないのに、これほどの個性的な出展者が一同に会しているというのは、やはり大磯の魅力があってのことだろう。相模川以西の素晴らしい店を知るきっかけにもなるので(逆に言うと、大手メディアにそれらの店が取り上げられることが少ないので、この祭りがないと知る機会がもてないのです)これくらいのまったりとした規模で今後とも続いて欲しいものである。
コメント
リポートありがとうございます。大磯を愛するものです。
記事に、「フリーマーケット」とありますが、フリマではありません。「古物」の販売も基本的にありませんので、純粋に「手づくり、クラフト」の市、マーケットです。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
こんにちは。記事中の誤解を生じかねない表現につきまして、ご指摘いただきありがとうございます。早速修正をいたしました。
「古物」の販売が基本的にないとのことですが、私がうかがった開催会のいくつかにおいて、『古本波止場』の企画で出店されている方がいらっしゃり、
それを元に「古物」の販売が行われているとリポートに書いたように思います。
訪問者側としては、常設企画と特別企画のゾーニングを必ずしも熟知して訪れるというわけではないので、『大磯市』様側の開催主旨を正確に受け取っていなかったということにつきましては、どうかご容赦をいただきたいところです。
もしコメントを書かれた方が関係者の方ということでしたら、毎月素敵なイベントを世に送り出していただいているということに、(こんな場でなんですが)感謝させていただきたいと思います。これからも愉快な企画を期待しております。