今春4月1日から消費税率が8%になることを受け、鉄道各社が足並みを揃えて運賃の値上げを発表した。また、これまで行われてきた消費税増税の反映時と異なり、多くの鉄道会社がICカードによる運賃精算の場合1の位の端数を丸めない運賃を利用者から徴収する方針を決めた。一方、従来の券売機経由で購入される切符については、10円単位の運賃設定が継続されるようである。
鉄道各社によって異なる端数処理
ただし、券売機経由で購入された切符の10円未満の端数運賃の扱いについては、各社異なった計算方法を採用している。厚木駅や周辺駅に乗り入れている鉄道会社で、違いを見てみよう。
小田急線の場合
小田急線の初乗り運賃を例にしよう。小田急線の初乗り運賃は現在120円であるが、消費税率が8%になることで、120円に105分の108を掛けた123.42…円がおおよそ新運賃算出の基準値となる(実際の基準値は異なるので、参考基準値とする)。ICカードで清算の場合、1の位の端数が残った124円が新運賃となる。一方、券売機経由の購入の場合、1の位を無条件で切り上げた、130円が新運賃となるのである。つまり、小田急線利用者がICカードで運賃清算を行う場合には、券売機経由での購入と比べ運賃は必ず同額以下におさえられるということになる。
参考資料:鉄道運賃の改訂申請について(PDF)
相鉄線の場合
相鉄線の場合、現行の初乗り運賃が140円。新運賃の参考基準値は144円。ICカードの場合新運賃144円が請求され、券売機経由だと1の位を切り上げた150円が請求される。
つまり小田急線の場合と同じく、ICカードでの運賃清算が、券売機経由と比べ必ず同額以下となる。
参考資料:鉄道運賃の改訂申請について(PDF)
JR東日本の場合
JR東日本の場合は、ICカード普及率の高い山手線内および電車特定区間において、私鉄2社と同様、券売機経由で購入される切符の運賃は1の位切り上げとなる。つまり、ICカードでの運賃清算が、券売機経由と比べ必ず同額以下になる。
ただ、それ以外の区間では券売機経由での購入について、基準値を1の位で四捨五入して運賃を決める。初乗り140円の例では、ICカードを利用した場合144円が運賃となるが、券売機経由の購入では基準値144円の1の位を四捨五入するため、140円となり、ICカード運賃より安くなる。ICカードでの運賃清算は、券売機経由に比べ常に安くなるとは限らない。
参考資料:消費税率引き上げに伴う運賃・料金改定について(PDF)
さて、そうなると問題はJR厚木駅に乗り入れる相模線がどうなのかということだが、相模線は電車特定区間に含まれていない。そこで、ICカード利用で常に安くなるわけではないタイプの路線となる。
相模線の接続路線である東海道線や横浜線は電車特定区間に含まれるので、相模線とは異なった料金計算基準になるということにも注意が必要だ。
消費税増でICカードの利用者が増える
このように、首都圏路線を利用するICカード利用者は多くの場合券売機での購入者より運賃を安く済ませることが出来るようになるため、この運賃改定を機にICカードの普及には一層の拍車がかかると思われる。そこで、どの駅においても、改札におけるICカード読取設備の設置・拡充が急務となるはずだ。JR厚木駅でも、従来の貧弱な読取機ではなく、多数の利用者に対応できる通り抜け式の自動改札の導入がされるが、こういった背景があってのことであろう。
請求運賃に端数が生じることで、厚木駅の罠がバレる
もう一点、非常にどうでも良いことだが、JR厚木駅特有の事情が、備え付けのICカード読み取り機にタッチしないとJR厚木駅を経由しない迂回経路を通ったと見なされ、ICカード利用者に高額の運賃が請求されてしまうという現象である。
従来の10円単位の運賃請求では、この厚木駅の罠がバレにくかった。利用者はいつもよりICカードのチャージの減りが早い位にしか感じないだろう。ところが1の位の端数が発生するようになると、明らかに想定とは異なった運賃が取られていることに気付き易くなる。苦情件数も増えそうである。そこで、利用者にタッチを強制するゲート式の自動改札の導入に踏み切らざるを得なかったのではないか。
今回の厚木駅改札工事により、悪名高いJR厚木駅の悪名はすすがれ、ただの目立たない凡庸な駅になってくれそうである。万歳。
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